向こう側へ

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光に目が慣れてくると、ベッドに座るしおりの姿が見えた。あれ、しおりってこんなに目が大きかったっけ。二十年振りに見るしおりが、透明に澄んで見えて、僕は思わず目を逸らした。 「笹本くん、変わらないね」 しおりが微笑む。 「し、いや結城、あれ違うか、あ、」 しどろもどろになる僕にしおりはぷっと吹き出して、 「しおりでいいよ、ねぇ、相原くん」 カーテンの向こう側にいたらしい相原に声をかける。 「来てくれたのか」 やっぱり二十年振りの相原は、目尻の皺が深くなっていた。 「お、相原、老けたな」 手を挙げながら言うと 「お互い様だろ」 そう言って相原は笑った。 「えっと、これ」 下げてきた花を差し出す。 「やっぱり老けたな、常識人みたいじゃん」  相原が受け取り、「いけてくるよ」、しおりに言って病室を出て行く。 お願いね、と小さく手を振るしおりの腕を見て、胸がキュッとした。 目が大きくなったんじゃない、しおりは痩せたんだ。 「相原くん、気を使ってくれたのかな」 しおりが小声で言う。 「来てくれるとは思わなかった。 ……なんで来たの?」 囁くように言うしおりに 「なんでって、地下鉄に乗って」
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