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今年で23にもなる自分がガキ呼ばわりされるのは不本意だったが、かと言って大人であるとは逆立ちしても思えなかった。
「まだ続けてるんだな、ダイビング」
瞬間、蒼衣は恐れた。本分を忘れさせる諸悪の根源として、ダイビングが槍玉に挙げられるのを。
「……悪いかよ」
「悪いなんて言わねえよ。……年に数回。お前の顔を見るのはそれだけなのに、いつ帰ってきてもお前は俺より後に、濡れた体で帰ってくるんだ。いつからだ? ただいまおかえり、なんてバカみてえな挨拶が当たり前になってたのは」
苦笑する大吉の表情はどこか切なげだった。
「俺のせいだな。ろくに遊び相手にもなってやれなかった。蒼衣、お前は見つけちまったんだよ。これさえありゃあ他に何もかもいらねえっていう圧倒的な快感をな」
「か、快感……?」
「ぶはは、なんだよそのウブな反応はぁ、えぇ? その調子じゃ女にさえ興味なかったか?」
父親とこんな風に絡む耐性が薄い蒼衣は、赤面して顔を背けた。
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