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第2話-1
翌日、まだ日も昇りかけの午前7時半。蒼衣は父の運転する車の助手席に乗って、猛スピードで視界を横切る白いガードレール越しの海を眺めていた。
いつ見ても思う。早朝の海はまるで一晩ぐっすり休んでリフレッシュしたように、爽やかな輝きをしている。朝、海沿いの公道を久しぶりに再会した父親とドライブというのは、なかなか悪くない。
だが蒼衣の気分は、目的地が近づけば近づくほど盛り下がっていた。ただでさえ父経由で面接を依頼したのは昨日なのに、まさか翌日の朝っぱらから呼び出されるとは。
眠い。眠すぎる。運転席の大吉がなぜこんなに朝から元気でいられるのか不思議でならない。本当に同じ人間か。
「おら、見えたぞ」
豪快な声を上げる運転席の大吉。まっすぐ広い道路の伸びた先、左側に接するように大きな空色の建物が見えてきた。そのすぐ隣は海だ。というより工事で岸を増築してその上に建てたのがあの建物だから、海に浮かんでいると言った方がいいのかもしれない。
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