第2話-2

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 うっかり相槌を忘れていた。海原が掻い摘んで話してくれた説明には一応耳を向けていた。 「身体的な適性検査と、精神面の適性診断があるんですよね」 「そうそう。あ、ついたよ」  廊下を歩いたり角を曲がったり、階段を上ったりすること数分。蒼衣は殺風景な、10畳ほどの控え室のような場所に案内された。眼科にあるような視力検査用のボードが壁際に用意され、対角に丸イス。  一応形だけ用意してくれと言われて持って来た履歴書を手渡し、促されるまま丸イスに腰掛ける。 「蒼衣君は、それ裸眼?」 「はい」 「よかった。コンタクトだとどうしても水に流されることがあるから、目が悪いってだけで不採用な場合もあるくらいなんだよ」  くそ、目が悪ければ! 健康的な視力の家系を内心呪いながらも、努めて安心したように相槌を打って目隠し棒を受け取った。  左、右の目を片方ずつ黒い棒で隠して視力を測る。わざと間違えてやろうかと思ったが視力で落とされたとなると両親に怪しまれるリスクが高い。結果、両目とも2.0という極めて健康な数値を叩き出してしまった。 「よし、オッケー。今時メガネいらずの若者って珍しいからね。これからも大事にしなよ」     
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