第2話-2

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 図体に似合わない柔和な声で海原に視力を褒められる。まずい、どうやら知らないうちに第1関門を好成績で突破してしまったようだ。 「他の子ももう終わってプールに集合してるみたいだ。僕たちも行こう」 「え、他の子って……」  予想外の言葉に虚を突かれた蒼衣を、海原は丸めた目で見下ろす。 「あれ、大吉さんから聞いてない? そんなに大々的な求人はしてないのに、全国から志願の声が後を絶たなくてね。イルカの数的に1人しか雇えないから早い者勝ちで採用試験を受けてもらってるんだ。開催は2日おき。20人は超えてるかなぁ……まあ今の所全員不合格なんだけど」  聞いてないにもほどがある!  蒼衣は採用試験の段階から寝耳に水なのだ。あのテキトー親父め、ろくに詳細も覚えてないのに紹介しやがったな。思えばドルフィントレーナーという職名さえうろ覚えだったほどだ。 「そろそろ決めないとスケジュール的にもマズイんだけどなぁ。そういうわけで、頑張ってくれよ蒼衣君。さ、プールへ行こう。みんな待ってるはずだ」  蒼衣がプチパニックに陥っているのにも構わず、海原は蒼衣の背中を押して無理やり視力検査室から退出させた。来た道を戻り、さっきとは違う角を曲がる。     
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