第2話-2

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 おかしいと思ったんだ。紹介してもらったその翌日からもう出勤だなんて。こっちがニートで暇なのをいいことに早速呼びつけたんだろうが、それほどまでに一刻も早くドルフィントレーナーの代理が欲しいということだろう。  その一方で、全国から話を聞きつけて訪ねてくれた20人を軒並み突っぱねる非情さ。矛盾している。人事が足元を見ているのだ。次々若者が入社を志望して来るのをまるで当然のように思って、気に入らなければゴミのように捨てる。どうせ次が来るからだ。蒼衣を落とした数々の企業と、結局ここも一緒。  --頼まれたって入ってやるもんか。こんな不良物件、さっさとこっちから落ちて帰ってやる。  押されるがままだった蒼衣は、まもなく自分の足で歩き始めた。やがて金属製の重い扉の前に来ると、海原が力を込めてそれを開く。  薄暗かった視界に鮮やかなブルーが飛び込んだ。  屋内プールだった。蒼衣を取り囲む3面の壁は全面ガラス張り。磨き抜かれた壁面は朝の陽光を室内へ導き、揺れる水面を煌めかせる。一辺20メートルほどの正方形のプール。学校やスポーツセンターにあるようなものと異なり、かなり深さがありそうだった。 「イルカとのトレーニングに使うプールだ。プールと言っても、張ってあるのは海水だけどね」     
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