第2話-2

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 うず、と全身の細胞が疼く。鼻腔を突き抜ける潮の匂いが、蒼衣を海の男へと豹変させる。この全身が冷たい海水に沈むその瞬間を想像するだけで興奮する。  早く入らせろ。 「水着は持ってきてくれたよね? 貸し出したいにもこれだけの人数分はなくて。そこの更衣室で着替えたらあそこに集合だ。もうみんな集まってる」  海原の示す方を見ると、言う通りそこにはウェットスーツ姿の男女が6名、微妙な距離感で集合していた。あれが海原のいう"他の子"、即ち採用試験のライバルだろう。  蒼衣は更衣室に入り手早く自前のウェットスーツに着替えると、最低限に手首や腱を伸ばしてから集合場所へ駆けつけた。 「よし、これで全員だね」  プールのへりに集合してみて蒼衣がまず気づいたことは、事前に集合していた6名のうち採用試験を受ける者は4名だということだった。  では残りの2名は何者だったかというと--今、整列した蒼衣たちと対面するように立って口を開いた海原の横に、その2名が並んでいる。3人ともオレンジ色のラインが入ったお揃いのウェットスーツ姿だ。海原はいつの間に着替えたのだろう。 「改めまして、この度は当館の求人にご志願いただきありがとうございます。当館のイルカチーム、リーダーの海原です。本日は、よろしくお願いします!」     
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