第1話-2

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「……『御社なら職場として、私の生涯を捧げようと覚悟できるギリギリセーフのラインだったからです』」 「ぶっひゃっひゃっひゃっ! そりゃ落ちるわ!! 腹いてえー!!! そもそもお前、滑り止めでさえ県有数の企業ばっかだもんよ、強気すぎんだろ! 安住損保が滑り止めとか地元で聞いたことねえー!」  そんなことを言われたって、採用されても行きたいと思えない会社の面接になぜ行く必要がある。大学受験の際も第1志望のひとつしか受けなかったぐらいだ。  涼太は蒼衣の大学のすぐ隣にある私立大学に進学したので、大学生になってもよく遊ぶ仲でいれたのは幸いだった。 「とことん社会に向いてないよお前は。能力(スペック)あるぶんそのプライドの高さがマジもったいねえ。去年は俺も笑ってられたけどよ、そろそろ置いてっちまうぞ。少しずつ、慣らしてけよ。世の中理不尽だらけだぜ」  いかにも理不尽と縁遠そうな、とかく要領のいい涼太に言われても説得力は感じられなかったが。「置いてっちまうぞ」という厳しい言葉にはハッとさせられた。涼太にここまで言わせてはさすがに情けない。 「……そうだな。また、何か新しいバイト探してみる」     
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