ドライを極めた男

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どうしても気になることがあった。 分らないことは人に聞くが信条な俺だけど、たまには自分で調べてみたりもする。 「あ。発見」 便利な時代に生まれたもんだ。 予備知識なんてなくたって、検索をかければ何かしら出てくる。 すげえよ。ネット。 「たおかー。来てみー」 「今無理だろどう見ても。何?」 台所に立って晩飯作り真っ最中の田岡。 ジュージューと音を立てている手元のフライパンからは、食欲を誘う炒め物の匂いが。 そんな男を気にせず呼びつけると、すかさず当たり前の答えが返ってきた。 田岡は俺を振り返ることなく手を動かし続けている。 腹減ったと、ついさっきまで喚いていた俺のために。 だから俺も検索結果の画面を見せるのは諦めた。 この場から田岡の背中に向かって、書かれている文章を代弁すべく、声を張る。 「俺、コレだきっとー。お前とエッチしてる時のアレ、ドライオーガズムって言うんだってー」 ドガっシャンガラガラッ!って。 その瞬間、マンガかコント位でしか見ないような派手な落ち方で、田岡が扱っていたフライパンが床にひっくり返った。 飛び散った食材が無残。 今度は俺に正面を向けて、口をパクパクさせている田岡は無念。 「お……お前……」 「あーあ、俺の晩飯。何やってんだよ田岡」 「ッ何やってんだはお前だろ! 大人しくしてると思ったら人のパソコンで何調べてんだ!?」 滅多に声を荒げない男も、この時ばかりは我慢が利かなかったようだ。 落っこちているフライパンには目もくれず、こっちに来ると慌ててパソコンを覗き込んだ。 だけどその画面を見た直後、田岡の顔がピシッと凍りついた。 内容はまあ、イロイロです。
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