ドライを極めた男

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俺が黙り込んでしまうのを見て、田岡は溜息一つ。 顔を上げて、穏やかに俺を宥めた。 「……ごめん。いいから、今のも無かったことにして。全部忘れろ。山本のこと困らせたい訳じゃない」 「いや……そうじゃ、なくて……」 「コンビに行ってくる。餓死しそうなんだろ? なんかもう買ってきた方が早いし、ちょっと待ってて」 俺の言い訳を聞かず、田岡は言うだけ言って部屋から出て行った。   この部屋から、最寄りのコンビニまでは歩いて三分程度。 田岡はすぐに戻ってくるだろうし、その時には念願の飯付きだ。 ところがあり得ないことに、俺はコンビニ弁当なんかどうでも良かった。 改めて告られて、酒のついでとは違う真正面からの告白を受けて。 「…………」 どうしよう。 その場にしゃがんだ。ストン、と。 一気に力抜けて。 心臓がバクバクいってる。 事故でシちゃってからもやっぱそこは男同士だから、どうこうなるなんて思わなかった。 だから友達って言ってきたけど、普通に考えれば友達とはキスなんかしないし、セックスなんて有る筈がない。 けど俺は田岡としてる。しかも全然嫌じゃない。 むしろかなりイイ。 男だけどエッチくらいまあいっか、なんて軽いことを思ったのも、それは相手が田岡だったから。 田岡じゃなかったら、俺は多分こんなことしていなかった。 「……うあー」 顔、あっつい。
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