1346人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
***
で。田岡の部屋。
お前の部屋行きたい、の後、見るからに難色を示した田岡。
またそんなこと言い出すのかよって感じに困っていた。
だから。
「ちょっと……パソコン? あー……そう! 調子悪くて! パソコンの!! 課題終わってねえからさあ、貸してくんない?」
と、我ながら呆れを通り越す苦しい誤魔化し方で、なんとか田岡の部屋に上がり込んだ。
しかしそこは無計画。
現在俺は、難題に直面中。
「課題ってこの前言ってたレポートだろ? 資料あんの? 手ぶらみたいだけど」
「…………」
田岡の部屋でノートパソコンを貸し出されて、それの前に座ってからはもう言い訳の仕様がない。
俺が常に持っている物と言えば、財布とかケータイとかその程度。
大きな荷物をどこにでも抱えて持っていく女の子とは違って、必要最低限の物しか持ち合わせない。
ましてレポート用の資料なんて。
ていうか教科書類、全部大学のロッカーにぶち込んでくるからね。
おそらく田岡は、最初から分かっていたと思う。
折角目を見て話せるようになったのに、また拗らせる事がないようにという配慮で俺のウソに付き合った。
多少さっきの言い方には棘があったものの、それは全面的に俺が悪い。
「好きに使ってて」
俺に茶を出すだけ出して、田岡はそれ以上何も言わずに背を向けた。
学生が一時的に住まう狭い部屋の中、田岡が足を向けた先はまさかの玄関。
最初のコメントを投稿しよう!