結局、男はオオカミでした。

13/13
1317人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「…………」 重症だ。俺ビョーキだ。 最終的にどこに辿り着いてんだよ。 これは冗談抜きに病院行ったほうがいい。 どこ行きゃいいんだ? 内科…精神科…? よく分かんないからもう、動物病院とか行っちゃおうかな。 「山本」 「おぅっ、ハイ!」 ノーAV生活の危機から、俺の頭はカオスと化していた。 ぐっちゃぐちゃに、あちこち飛んでいた思考を呼び戻したのは田岡の声。 驚きついでにイイ返事で応えてしまった。 「思ってること全部口に出てる」 「エ…」 うそっ!? 「ってのは言いすぎだけど、でもなんか分かるよ。そんなに嫌? 没収。俺じゃ満足できない?」 どことなくションボリした感じで言われた。 そんな顔をされたら俺だって焦る。 「あ、ちが…そうじゃなくて…」 「じゃあ潔く諦めろ」 「え?」 あれ、おかしいな。一瞬しょんぼりしたよな。 その切り替えの早さは一体なに。 「お前は俺で満足できる。そうだよな?」 「……ハイ」 「もう女に目移りしない。分かった?」 「……ワカリマシタ」 子供に言い聞かせるみたいに諭されて、俺は片言で答えた。 田岡のニッコリ。 頭をポンポンと撫でられて心底納得がいかなかった。 「山本」 「……なんでしょう」 「次俺のバイト代入ったら焼き肉行く?」 「えっ、焼肉?!」 お決まりだけど、勢い良く顔を上げてからしまったと思う。 どうして俺はこう単純にできているんだろう。 「今言ったこと守れたら好きなだけ食わせてやるよ」 「…………」 「どう?」 「……俺もう田岡しか見ない」 「そうしとけ」 くっそ、カッコイイな。 もういいよ。いい加減引き下がるよ。 愛があればそれでいいよ。 俺は田岡に告られて。 そして見事に、釣られました。 「……ついでに今日の昼オゴって?」 「キス一回」 「…………」 上っ等だコノヤロウ。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!