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「……あー、そーだ田岡。今朝、俺でシャンプー切れた」
「ああ。分かった、買っとく」
「んー」
俺のお気に入りポイント、肩甲骨の間のコリを再びほぐされている時、ふと思い出して田岡に報告した。
どうしてこんな場所が筋肉痛になったのかは謎。
どんな荷物の運び方をしたらここにクるのかなあ、なんて考えていた俺の横では、瀬戸がはい?って顔して目をパチクリさせている。
「……今の会話、何?」
ためらった様な声質で聞かれ、俺は瀬戸に顔を向けた。
田岡もつられて手を止めたけど、俺に促されて再開。
「何って?」
「いや、お前……」
きょとんと聞き返す俺と、瀬戸は怪訝に顔を顰めた。
だって困るよな、シャンプー無いの。
使おうと思ってボトルプッシュして、スカって音がした時の残念感といったらない。
水で薄めてなんとか泡立てようとする、あの惨めさ。
悲劇だ。
「田岡は何、とうとう山本に居付かれた? お前らルームシェアなんかしてなかったよな?」
マッサージ継続中の俺達に向かって、瀬戸が窺い立てるように聞いてくる。
居付かれた、とかさ。
俺はどんな風に思われてんだ。
人の迷惑も顧みない図々しい奴みたいな言い方。
……合ってるか?
そういえば最近、何かと田岡の家に上がり込んでいる気がする。
「本格的な居候になる前にさっさと追い出した方がいいぞ? 山本のことだし、どうせ田岡に甘えきってんだろ。飯食わせてもらって? 課題手伝ってもらって? 自分は恩返しの一つもしないで?」
うるさい、瀬戸。
全部当たってる所がウザい。
ああ、でも最後は違うな。
恩返しらしき事はしている。
たぶん。
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