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「……すみません」
「……準備してくる、っつったろ。女とは……勝手が違えんだよ」
課長の肩が呼吸に合わせて揺れている。
時折ビクビクと震える様子はなんだか辛そうだ。
艶っぽく唇を噛みしめ、声を上げそうになるのを堪えているのが分かる。
声聞きたいなと、不意に思って、それに気づいてこの状況の危うさに気づいた。
これはもう認めるしかない。
なぜなら物証がここに在る。
さっき出したばかりだと言うのに。
課長のこの姿を見ているだけなのに。
俺の愚かな下半身は、とんでもなく元気な事になっていた。
「課長……」
「ん」
「……辛いんですか?」
頷きも、応えもしない代わりに少しだけ瞼が伏せられる。
儚げな表情は切なく繊細なもので色も深かった。
どうしよう、可愛い。
こんな顔もするんだ。
「……俺でいいんですか」
「……ああ。欲しい」
熱に浮かされたその目。
こっちまで当てられそう。
ごくりと再び生唾を飲み込み、手を伸ばせない事を心からもどかしく感じた。
そんな俺を課長は窺うように見下ろし、後ろを慣らしていた自らの指をそこから引き抜いた。
「なあ……いいか?」
ここまでしておきながら唐突に聞かれ、切羽詰まった顔をする課長に息が止まった。
男なんて知らないし、同性とどうこうなんて考えた事もないけれど。
たぶん俺は、この人とならできる。
正直な所、いくら男と分かっていてもこの色気はただ事ではない。
どう答えるべきなのか躊躇いつつも、当たり障りのない所で口を開いた。
「……俺でいいなら」
「俺はお前がいい」
女の高い声なんかじゃない。
それは良く聞き知った綺麗な男の声。
けれどもドキッと、貫かれるような衝撃とともに心臓が高鳴った。
壮絶な光景に煽られて、この先に待ち構えている誘惑が俺を唆す。
「ぁ……」
昂ぶったソコに課長の手がそっと触れた。
シーツの上に投げ出されていたゴムをぱっぱと装着させられる。
その手際の良さは慣れていそうだという俺の疑惑を確信に変えさせた。
腰を浮かせ、男の性器を自分の後ろへと宛がうこの人は、やっぱり俺の知らない別の誰かとしか思えない。
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