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頼りになるカッコイイ上司だと思ってきたけど、人の見方なんてきっかけさえあればガラリと変わるもののようだ。
だって物凄く、課長が可愛く見える。
色気が尋常ではない上司の姿は、男心をこれでもかというほど巧妙に突いてくる。
長い睫が揺れ動き赤い唇は微かに弧を描き、艶やかなその表情に魅入って釘付けになる。
煩い心音を聞きながら眺めていたら、ちゅっと軽く唇にキスされた。
その事実に、すぐには気づけない。
「……え」
「ボケッとしてんな。食いたくなるだろ」
「へ……」
余裕綽々に大人の笑顔を見せつけられる。
面と向かって食いたい発言をかまされ、大人しくしていたこの下半身が勝手に疼きだした。
あれだけの衝撃的映像を目の当たりにした俺の脳は、課長の一言一句を拾ってはさっきまでの夢心地体験を思い起こさせてくる。
気づかれないようにゆっくりと尻を後ろに突き出して課長から下半身を遠ざけた。
しかし俺の状態に目敏くも勘づいてしまったこの人。
逃げるなんて許さないとばかりに、グイッと自分の膝を俺の股間に捻じ込ませてきた。
「ちょっ!」
いたずらに与えられる刺激。
顔が真っ赤になっていく俺を見て課長はピッタリと俺の体に擦り寄った。
「ばーか。冗談だっての。治めろ」
「す、みません……。努力するので足退けて……」
「若えよなホント。また今度な」
「は、い……」
確実に遊ばれている。
食い込まされていた膝が引き、俺は懇々と頭の中で円周率を唱えた。
しかし必死になる余りそれはどうやら口にまで出ていたようで、しばらく俺を眺めていた課長も途中で堪えきれなくなったらしい。
ふっと吹き出し、頭をぐっしゃぐしゃに撫で回された。
抜けないガキ扱い。
俺の戦いはこれからだ。
「なあ」
「はい?」
「明日ヒマか?」
「……はい」
とりあえず、手始めにデートから。
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