年上の恋人にヤキモキする

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下から微妙な顔をしてこっちを見上げてきた彼。 期待に目を輝かせる俺に引いたのか、頬をピクッとひきつらせて軽く息をついた。 「……分かってるだろうが柔らかみも何もない男の太腿だぞ。ヌけなくてもお前のせいだからな。俺は知らん」 「いや大丈夫です、確実にヌけるんで。え、でもいいんですか、ホントにいいんですかっ」 「うるせえ。早く来い」 「あ、はいっ。いきます」 意気揚々と手をかけたこの人の太腿。 この時点で既に、素股で終わらせられる気がしない。 「……おい。中はダメだからな」 「え? ああ、はーい」 「なんだその気の抜けた返事は」 魂胆を読まれて先に釘を刺された。 へらっと笑って誤魔化すと、この人からは今度こそ盛大なため息が漏れる。 そしてポンと、子供にするみたいに頭へと手が置かれた。 「お預け」 お預けってアンタ。 「貸してやるのは足だけだぞ。分かってるな」 「……ハイ」 「よし。いい子だ」 「…………」 犬か、俺は。 頭を撫でられて不満に口を尖らせた。 それを眺め上げてくるこの人。 誘ってるんだかなんなんだか、そのままこくっと首を傾げた。 「太腿だけで我慢できたら後でご褒美くれてやるよ」 「えっ?」 ご褒美。 なんだその破壊力高い単語。 「え……それって、なんですか…?」 「さあ? なんだろうな?」 もどかしく焦らすように俺を見上げて薄く笑う。 妖しく弧を描く唇に俺は身悶えた。 「っ……なんかズルい!」 「大人ってのは大概ズルいもんだ」 「俺も成人してますよッ!」 「俺からしてみりゃまだまだガキだよ」 敵わない。 年上の恋人は一枚も二枚も上手であって、始まったばかりの俺の恋はだいぶ多難に満ちていた。 これはもう引き下がるしかない。 ぐぬぬっと奥歯を噛みしめ悔しさをやり過ごし、彼の太腿にもう一度手を這わせた。 本心を語れば入れたいけれど、この妙にえっろい内股だってなかなかの代物だろう。 「……お借りします」 「どうぞ」 極上の肌艶にゴクリと喉が鳴る。 俺の新境地開拓は日々記録を更新中だ。
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