迎え

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 こんな話し方をする小春ママは別にギャルってわけでもない。四十五歳の成人男性。つまり、オネェさん。フラワーショップ幸本の常連のお客様で、毎週店内に飾るアレンジをオーダーしてくれる。注文の花束は輝明叔父さんが作っているんだけど、ちょっと前から叔父さん監修の元で、僕がお店に来たお客さんの花束を作りをするようになった。いわゆる修行だ。修行の日々を経て、本日遂に常連さんの注文の花束を、僕ひとりで作るのを認めて貰えるようになったんだ。花の種類も、その配置や量も全て僕がデザインした。完全なるオリジナル作品。 「ありがとうございます。褒めて貰えたって叔父さんに伝えなきゃ。お代は四千三百二十円です」 「えー、本当にぃ? こんなに可愛いくて素敵なのに、安いじゃな~い! いいわ。はい。これ」  小春ママがしなやかな手つきでそっと五千円札を手渡してきた。 「六百八十円のお釣りですね」  僕がエプロンのポケットからお財布ポーチを出し、小銭をごそごそ拾っていると小春ママの大きな手が僕の手の上に置かれた。 「いいのよ、いいのよ。お釣りは諒ちゃんのお駄賃にして。また素敵なお花頼むわね」 「え……。ありがとうございます!」
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