裏登校時間

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裏登校時間

お向かいの窓から少し光がもれていた。きっとそうちゃんもこのラジオを聴いているはず。だって私たちが大好きなロックバンドの新曲がヘビロテでかかっているんだから。 中学までは顔を洗えばそれでよかった。高校になると、軽くメイクをしないと浮いてしまう。面倒だけど、これで周りが私に対して優しくなってくれるのなら、やらないわけにはいかない。でもきっと、そうちゃんは気がつかないだろう。 「いってきまーす。そうちゃーん、起きてる?」 いつものように窓からそうちゃんの手が挙がった。 「もう起きなきゃ、学校間に合わないよー」 案の定、その手が適当に振られた。高校でモテモテの私がなんでこんなことしてるんだろう。最近すごくバカらしく思えてきた。 そうちゃんは、私のお隣さん。私の幼なじみ。私のことなんて、目覚まし時計くらいにしかおもっていないのだ。 でも本当はとても優しい。何かと問題のあるこの素の性格を全力で受け流してくれる。猫かぶりの私が素でいれるのは、きっとそうちゃんと家族くらいだ。 そしてそうちゃんは、ムカつくくらいのぱっちり二重だ。幼なじみの贔屓目を差し引いても、羨ましい方だと思う。そのせいで私は悲しいくらいに、一重の自分の目を哀れんでしまう。 今日から夏服に変わる。これを1番にそうちゃんに見せたかった。だから早起きしたというのに、そうちゃんはなかなか降りてこない。 最後に1番肝心なとこだけど、そうちゃんは、チビでデブで将来は絶対おじさんに似て禿げる。神様は残酷だ。そんなそうちゃんでも、私は大好きなのだ。
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