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登校時間
窓から伝わるジリジリとした太陽の光。付けっ放しのラジオからは大好きなロックバンドの新曲がヘビロテでかかっていた。これからの季節に似合う曲。毎日少しずつだけど、夏が近づいていた。
「いってきまーす。そうちゃーん、起きてる?」
僕は窓から手を挙げてみせた。
「もう起きなきゃ、学校間に合わないよー」
今度は手を振ってみせた。
元気のいい明るい声。彼女は、僕のお隣さん。僕の幼なじみ。僕はいつも彼女の声で目を覚ます。
彼女はとても賢い。私立高校からぜひ来て欲しいと声がかかるくらい。彼女はその中から電車通学ができる共学の進学校に入学した。僕といえば、家の近くの中堅の共学公立高校にギリギリ受かった。
そして彼女は可愛い。幼なじみの贔屓目を差し引いても、可愛い方だと思う。そのせいで僕は悲しいくらいに、女の子に一目惚れをすることがなかった。そんな彼女と比べ僕といえば、身長も彼女より低く、顔面偏差値まで低い。彼女の隣に並べば、いつだって弟に見られた。
例えるなら、僕と彼女は月とスッポン。
「颯太ー、時間大丈夫なのー?」
いけない、いけない。そんな時間に余裕なんてなかった。物思いにふけった頭をふって、僕は急いで準備を始めた。
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