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「まあ、二回も同じ手に引っかかるような無能は、うちにはいらないよね」
不意に聞こえた声は、案内人から人質になった少年、音無吉作(おとなしきっさく)のものだった。
細身の体つきに整った黒髪。
そして吸い込まれそうな漆黒の瞳。
美少年と言っていい顔立ちだが、その性格はりんごと気が合いそうなほどに、残酷で、冷酷だった。
「吉作くん、お姉ちゃんをバカにしたらダメだよー。お姉ちゃんは私と一緒に数々のゲーム大会を制覇してきた天才なんだからね」
りんごが、まるで見せつけるように私に抱き着きながら言う。
その白々しい物言いに、私は大きくため息を吐いた。
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