4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
それで、今に至る。
明らかに減ったメール。
素っ気なくなった会話。
あの日の「ごめんな」という言葉。
私たちの中途半端な関係。
それらの全てに、私は限界を感じていた。
もうやめよう、メールも会うのも。
それを伝えるために会っているのだ、今日は。
何度も何度も自分に言い聞かせているのに、声にならない。
「孝弘」
「海色。」
やっと出た言葉が、彼の声と被った。
「あ、ごめんなに?」
「いや、大丈夫だよ。先に言って。」
孝弘の声を、最後にちゃんと聞くんだ。
「月が海に浮かぶのを水月って言うけど、この海の色は何て言えば良いんだろうって思った。」
そう言われて、目を前に向けた。
誰も居ない、夜の海。
穏やかな波の音と優しく浮かぶ満月。
「分からない。」
「分からないね。」
その時、私の唇に、
覚えのある忘れられない感触が、
風と共に触れていた。
最初のコメントを投稿しよう!