水月に照らされて

この海色を、何と言おうか。

孝弘のキスだ、と認識するまでに時間が掛かった。

角度を変えて何度も重ねるのが、彼のクセ。

切なく漏れる吐息。

さきこ、と呟いた後に長く深く口付ける。

…何にも変わっていない…。

「駄目だよ」

私は、彼の胸を押して離れようとした。

泣いていた。

私も、孝弘も。

「駄目なんだよ。」