この海色を、何と言おうか。

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真っ暗なのに、はっきりと分かる表情。 「咲子、俺は」 「このままじゃ、駄目だよ。」 ずっと言いたかったこと。 「話をしなきゃ、分かるものも分からないんだよ。」 心に隠していたこと。 「分からないなら、考えたら良いよ。2人で話して、分かっていこうよ。」 本音を言うのが怖かった。 何と思われるのか、どんな表情をするのか。 でも、今なら言える。 「私は孝弘が好き。この気持ちに嘘はつきたくないの。本当に好きなんだよ。」 「俺は」 しっかりと目が合ったのが分かった。 「連絡が来ないからって、ただそれだけで勘違いしてた。咲子の気持ちを全然考えてなかった。」 「それは私もだよ。孝弘の負担になりたくないからって、それが良い彼女の条件だからっ…て…。」 言い終わるか終わらないかの瞬間で、彼が私を抱き締めた。 今までで一番、強く感じた。 「馬鹿だな、俺たち。」 懐かしい匂いと温もりに泣きそうになる。 その時、汽車が警笛を鳴らしながらやってくる音がした。 2人を包む水月の海色に、混ざるライト。 それでも、私たちは離れなかった。 「咲子が好きだよ」 ずっと聞きたかった彼の心。 この海が私たちをもう一度繋いでくれたのだと思ったとき 汽車は、行ってしまった。 海を照らす月だけが、私たちを見ていた。 この海の色は、まだ知らない。
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