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「一つ目入道さんお願いします! お願いしますよぉ! ここの『十回召喚』ってボタン、一回ポチって押してくれるだけでいいんで! 俺じゃ絶対物欲センサー発動してまた爆死するんで俺を助けると思ってお願いしますよおぉぉ!!」
「ええい、化け狐うるさいぞ! そうやって煩悩にまみれておるから爆死もするんじゃ! 星3のキャラでも十分に使えるじゃろうが! 1%の確率でしか出ない星5のキャラを夢見るのは止めい!」
「でも欲しいんですよおぉぉぉぉ!!!」
狐の尻尾を生やした少年、化け狐が一つ目の坊主、一つ目入道に縋りついて今にも泣きそうな表情で物欲に塗れた言葉を叫び続ける。
一つ目入道が持つ杖で殴られても化け狐が取りすがるのを止めないのは、以前化け狐がプレイしているスマホゲームのガチャを一つ目入道が回したところ、レアキャラがことごとく召喚された過去が忘れられないからだろう。
一つ目入道は仮にも僧が化けた者で徳が高いから、と言ったのは誰だったか。それ以来一つ目入道はずっと、化け狐にこうして懇願され続けている。
「でもそう言いながら一つ目入道さん、自分でも同じゲームプレイするのいい人だよねー」
「もふもふ……」
「もふもふ……」
薬壺を持ったプレーリードッグ、三匹の鎌鼬の内の一匹は、そう言いながら狸の耳と尻尾が生えた化け狸の青年に大人しく撫でられるがままになっていて。その隣で犬だが鼻だけ豚の二足歩行の動物、山びこが化け狸の言葉を繰り返していた。
めいめい、思い思いの事を楽しむ人外の化生たち。
「……ちょっと待ちな」
その中で座敷童に纏わりつかれている猫又が固く声を上げた。
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