6人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう、私たちは妖怪。地下鉄が出来たくらいの頃から、ここら辺は私たち妖怪の根城なんだ。電車ってすごいよね。あんなにピカピカ光ってて沢山の人を乗せて一日に何十本も何百本もものすごい速度で駆け抜けていく。でも貴方も地下鉄に乗った事があるなら分かるでしょう? 地下鉄を走る電車の中は光に溢れているのに、その外側のトンネルは、なんて暗いんだろうって。電車の壁一枚を隔てた外側は、内側の光が嘘みたいに真っ暗だって」
それは必要がないから。必要がないものに無駄に金をかけるはずもない。だから地下鉄のトンネルには最低限の明かりしかない。比較する電車内の明かりと比べると、ほとんど無と言ってもいい位のか細さ。
「貴方は地下鉄に乗っていて、考えた事はないかな? あんなに眩しい電車の光に照らされた部分は確かに明るいけれど、その光が届かないところにもしかしたら何かいるかもしれないって。光の届かない電車の壁際。車両下。電車が過ぎ去った後の空間。電車の眩しい光が嘘みたいな暗闇の中で、もしかしたら何かが蠢いているかもしれないって」
光が強ければ強いほど、闇も濃くなる。電車の強い照明が光ならば、その光に照らされない地下鉄トンネルはまさしく濃い闇の中だった。
その闇の中、それを愛おし気に見せびらかすように座敷童が両腕を広げる。
「私たちは昔から、そういう人間の、闇への恐怖の中にいた。
最初のコメントを投稿しよう!