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「美味しい!」
「そりゃそうよ。ここの名物だもの」
「本だと見た目は相当アレだって書いてあったのに、こんなに美味しいなんて」
ひと通り町を案内してもらいキスカとアルはお昼にしていました。今は広場のベンチでこの街の名物のイカ焼きに舌鼓をうっているところです。
慣れない食べ物に苦戦するアルを見ながらキスカはアルと話します。
「美味しい物もあるし娯楽施設もちゃんとあるみたいだし、軍事以外にも良いところ沢山あるじゃないか」
「娯楽といっても大半は大人しか利用できないわ。名物もソレしかないしさ」
キスカはイカ焼きを指さします。
「でも治安も良いみたいだ」
「そんなの軍が直接見回りしている場所だけよ。大半は取り締まりすらされていないわ。少し中心部を外れたらあっという間にバラバラにされるでしょうね」
キスカは続けます。
「軍事的に発達してるといっても実際は内部で派閥ができてる。軍内部も穏やかな状況じゃないの。お陰で中心部以外はほったらかしで犯罪が蔓延してる。中には国外からの人売りがいることもあるから、あんまりふらふらしてちゃ駄目よ?」
そう言ってキスカはアルの方を向きます。
そこにアルの姿は見えません。
「あれ?」
辺りを見回すと、アルがふらふらと路地裏へと歩いていくのが見えました。
「ちょっと、どこ行くの!?」
先程の話の直後でなぜ1人で行動するのでしょう。そもそも目が見えないのになぜ勝手に行動するのでしょう。
考えるのは後です。このままアルを行かせるわけにはいきません。キスカは急いでアルを追いかけます。
「ちょっとアル、どこ行ってんの!?」
追い付いたキスカはアルに怒鳴ります。キスカに気付いたアルは申し訳なさそうにします。
「ああ、ごめん。ちょっと向こうのお祭り騒ぎが気になってさ」
(好奇心旺盛か!)
頭をかいてアルは謝罪します。初めて会ったときは大人びた印象でしたが、中身はまだ子供なのだと実感してなんだかキスカは拍子抜けしてしまいました。
「はあ、とにかく広場へ戻るわよ。聞いてたか知らないけどこういう狭い場所が一番危ないんだから」
「ああ、その通りだな嬢ちゃん」
突然聞こえた声に驚いて振り向くと、どう見ても悪人といった面の男達が道を塞ぐようにして立っていました。
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