プロローグ 目無しの少年

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「最後の1人、見つけたよ」 アルは腕にしがみついている少女を(なか)ば引きずるようにして、皆が待つ院内の広間に帰ってきました。 「アル兄見つけるの早いよー。見つからないように皆で作戦立てたのに」 「いつからかくれんぼは僕と皆の二極化したのかな?」 そう指摘するもアルはだいたい察していました。 アルに一度でいいから勝ちたいのです。 かくれんぼだけでなくアルは負け知らずで、子供たちの間ではアルを負かすことが一種の悲願になっていました。 それにアルは気付いていましたが、それで容赦(ようしゃ)するつもりは毛頭ありませんでした。 自分達の力で勝たせた方が子供達のためになる、という理由があります。しかし、本心はそんな優しい理由ではなく、子供らしい理由です。 負けたくないのです。アルは理性的で冷静な反面子供らしさが抜けきれておらず、頑固で負けず嫌いでした。 たとえわざとであっても自分が何かで負けるというのは、アルのプライドに反するものでした。 我ながら少し大人げないとも分かっていましたが。
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