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プロローグ 目無しの少年
少年は暗闇の中、何も見えずに歩いていました。
歳は13、4くらいでしょうか。深い蒼の髪と目に巻いた蒼い手拭いが特徴的です。少年は何も見えないのも意に介さず前に進んでいきます。
まるで少年には何がどこにあるかわかっているようです。
いや、実際にわかっていました。
「さて、どこにいるのかな?」
少年はわざとらしく辺りをきょろきょろします。
すると、すぐ側の茂みからわずかに笑い声が聞こえてきました。
普通の人なら聞き逃すような小さな声も少年は逃しません。少年は勝ち誇ったように笑みを浮かべると、茂みに近づいて行きます。
そして、笑い声の主を捕まえました。
「あー 捕まったー! アル兄ひどいよー」
頬をぷくー、とふくらませる年下の少女にアルと呼ばれた少年は苦笑いで答えます。
「かくれんぼってそういう遊びだからね。それを言うなら目の見えない僕に鬼をさせる皆も十分ひどいよ」
「どうせアル兄ならすぐ見つけちゃうでしょ?」
「簡単に言うけど大変なんだよ? 聴覚しか頼れるものがないし、時々僕の目が見えないのをいいことに隠れる場所変えてるでしょ」
アルの言ったことに図星なのか少女は「ふふーん♪」と誤魔化すように腕にしがみついてきました。アルはその様子を抱きつかれた腕を通じて微笑ましさ半分、呆れ半分で感じていました。
アルがいるのは小さな町の孤児院です。アルの両親はアルが物心つく前に亡くなっています。
身寄りも無く、引き取る人もいない幼いアルをここまで育ててくれたのが今暮らしている孤児院でした。今では孤児の子供たちの中では一番年上で、クールで面倒見の良い性格から他の子供たちからも好かれていました。
アルにとってはこの孤児院が家であり院長と子供たちが唯一の家族でした。
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