耳無しの反撃

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耳無しの反撃

夜も更けた時間、男は月明かりとランプの淡い光を頼りに見回りをしていました。男の顔には包帯が巻かれており痛々しい傷跡が見えています。 包帯男は時折顔をしかめ、そのたび頭を押さえ暴言を吐きます。 「痛ぇッ! あのガキ絶対に殺してやる!」 キスカにレンガで殴られた男です。 気絶から目覚め、金髪とフードになだめられて今は大人しくしていますが、内心キスカへの復讐心が煮えたぎっていることでしょう。 「商品とか関係ねぇ。徹底的にいたぶってやる」 「それは残念だけど無理ね」 「え......」 女の声が聞こえたと同時に男の後頭部に激痛が走りました。 「あれ、結構本気で殴ったのに気絶しないなんて頑丈ね」 包帯男は突如聞こえた声の主に殴り倒され、頭を抱えます。声の主は倒れた包帯男に再度鉄パイプを降り下ろしました。 ごつっ、と鈍い音がして包帯男から力が抜けて動かなくなります。 鉄パイプを片手に肩を回して体を動かしていると後ろの物置から声が響きます。 「キスカ、いくらなんでも殺すのはやめてよ?」 「そこまで考えなしに行動してないわよ。まあ、こんなに同じ箇所を殴られたらコブの1つでも出来そうだけど」 キスカは気絶した男を拘束しながら物置部屋にいるアルへ言います。 「本当にちゃんと隠れててよ? もう1回捕まったら今度は見捨てるからね」 「う、わかってるよ」     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ キスカは曲がり角で顔だけ出して通路の様子を確認します。通路は人気が無く静かです。 今回の拉致は最初の3人だけではなく、他にも共犯者がいる可能性を考慮してキスカは警戒していました。しかしひと通り見て回ったところ、どうやら最初に見た3人だけのようです。その内1人は既に処理済みです。 普段、父から鬼のような訓練を受けているキスカなら冷静に行動すれば鎮圧は難しいことではありません。 (とはいえ、あっちは銃持ち。奇襲でもしないと厳しいわね) キスカはめぼしい物がないか周りに目を向けると様々なガラクタが転がっています。 (お、これいいんじゃない) その中の1つを見つけたキスカの表情は悪巧みする子供のようでした。
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