ともに歩むとも知らず

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ともに歩むとも知らず

 2008年5月9日。世間にとってはなんの変哲もないただの金曜日であるが、金森大輔にとっては一世一代の大勝負となる予定だ。  その予定を立てているのが丸一週間前の5月2日の放課後である。 「なあ、本当にやるの、大輔」  煮え切らない様子で坪井信吾は問いかけた。 「ここで逃げたらカッコワリーだろ!男はやるって決めたらやるもんだぜ」  胸を張った大輔の横ではぁ、と信吾がため息を吐く。 「もしも上手くいったらさ、大輔は学校中の男から羨ましがられるんだぜ?想像するだけで羨ましいなぁ」  日本の小学4年生のクラスで一際浮いている日系ブラジル人のハーバード瑞樹が、さながら男性に恋心を寄せる女性のような顔をして言った。 「ハバ、それはせなちゃんと付き合えるのが羨ましいのか、羨ましがられるのがいいのかどっちだよ」 「そりゃ伊東さんと付き合えることでしょ」 「そうとは限らないぜ、ハバは変なところあるからな」  大輔と信吾はそう言ってハバに顔を向けた。 「もちろんせなちゃんとってのもいいけど、俺は注目されるのが羨ましいんだよ。世の中が俺に釘付け!って感じなのがたまらねーんだ」  大輔の期待を裏切らず、信吾の期待を裏切る結果だった。本当にこのままでいいのか、と信吾は小学生らしからぬしかめっ面で校門を後にする。
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