彼が鳶から番犬になるまで

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  「時々見舞いに来てくれた奴も、僕の彼女だと思ってたでしょ?」 「違うの?」 心底可哀想なものを見る目付きで、彼は私を見た。 「ちゃんとみたら解るでしょう、奴は男だって」 「へ?」 確かにメイクは濃いなあと思ったけど、綺麗でしたよ。 胸だってあったし。 「手がゴツかったでしょ」 ……そう言われればそんな気もする。 でもほら、ジロジロ見るのも悪いかなって思って、あんまり見ないようにしてたから。 言い訳するように口を開いた。 「マイノリティが悪い訳じゃないし……」 うん、別に男同士でも女同士でも、好きなら好きでいいんじゃないかな。 「やめてよ、奴は友達。 僕は女の子が好きだから」 さいですか。 結露が大きくなり始めたジョッキを傾ける。 グビグビ。 美味しいビールは美味しいうちに飲みたいからね。 なんだかいつもより、気持ちよくなるペースが早い気がする。 色々カミングアウトがあって、心臓がばくばくしてるせいだ、きっとそのせいだ。 「あのセンセもそう。 どう考えても本気じゃないっしょ。 そういうの、なんで気がつかないかなあ」 「ああ……」 ジョッキを置いた。 「……すみません、鈍くて」 虚ろな気持ちで町田さんをみた。 目が合うと、町田さんはふっと微笑んで目を細めた。 「ねぇ、あのセンセで妥協しようとしてたんだったら、僕でもよくない?」 ……は?
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