20人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「他のナースさんに声かけてました」
嘘は言ってない。
食事に誘ったかどうかは別として。
そう忠告した瞬間の彼女の顔は無表情だった。
努めて感情を出さないようにはしているのだろうが、そもそも素直なんだから会話を続ければ滲み出る。
その中に"悲しい"という感情がないのが解ったから、僕はほくそ笑んだ。
この足では動けない、ならば動く頭で策を練れば良い。
彼女は見事に医師を振った。
それ以降の二人のやり取りを見て確信したことだ。
とりあえず邪魔者は消えた。
あとは動けるようになるまでに、どう自分を売り込むか、だ。
ほんのちょっと意識してくれるだけでいい。
僕の友人が世話をしていたら複雑だなとか、退院したら寂しいなとか、それくらいでいい。
その後の攻撃は動けるようになってから仕掛ける。
飛んだ疑惑にしろ、友人にしろ、センセのことにしろ、彼女は騙されやすい。
それなら僕にも騙されてくれるだろう。
今はまだ本気になってくれなくて良いよ。
いずれさせるから。
飼い慣らされた犬の振りをして、飼い慣らしてあげる。
好きな子が出来るのが久々過ぎて、今まで以上にワクワクしてる。
僕ね、アレンジは得意なんだよ。
僕も君も楽しい生き方、良いと思わない?
覚悟して、川崎さん。
end
最初のコメントを投稿しよう!