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『どっちが男の色気が出せるか勝負の審判頼む』
申し訳程度に
「ついでにバーテンダー役やってくれ。バイトしてたことあるんだろう?」
と、奴等はのたまった。
「だーかーら、モデルの嫁さん撮影で今いないんだろ?ちょっとくらい付き合ってくれたっていいだろ」
小川圭、特撮出身の残念なアホの子キャラな俳優のセリフである。
拉致同然で連れてこられた家?は、モデル出身の高学歴俳優、佐野希のもので、南国風リゾートをコンセプトにしたファッションホテルのリノベーション物件は後付けの申し訳程度の居住性しかないため非常に非日常的だ。頭のいい元ヤン様である。悪質な確信犯めいている。
自分達の関係を言うなら、今撮影中のドラマの出演キャストとヘアメイクアーティストだ。
ちなみにドラマは深夜枠の重めのクライムサスペンスドラマだ。
小川が噛みつくようにほえる。
「だから、ディレクターが俺達二人にそれぞれ"悪い男の色気"を出すシーンがあってそれぞれ見せ場になるから、どっちがより"悪い男の色気"を出せるか見物だ的なことゆーから勝負すんの!」
追撃するように佐野が
「バーで酒飲みながらのシーンだから良かったらバーテンダー役やってもらいたいんだ。使うかなって物は用意したしリアリティー出したいんだ」
と控え目ながら自分の顔の価値のわかった男は微笑むように促す。
確かに対面式のカウンターキッチンにはカクテル作りに必要なおおよそがそろえられていた。
「確かに昔バーテンダーのバイトしてたけど腕は絶対鈍ってる。あと指定の酒とかあるの?」
脚本を渡され、ト書きを読みだいたいの判断はつけた。
「…氷は?」
これが俺の諦めの言葉だった。
練習がてら作った酒の空のグラス、ナッツやチーズ、つまみの軽食が並び、俺は1、2度ロック用の氷を作るのにアイスピックで手を傷つけ、厚手のバンドエイドを貼った手で白ワインをあける。随分良いものらしく気分がよかった。
「ほら、ほろ酔いどころかしたたか酔ってるだろ。やって見せろよ、どっちが悪い男の色気駄々漏れか!」
□行きつけのジャズバーセイレーン。
犯行計画途中の和田が佐々木に後戻りは出来ないと例え話をしながらさとすシーン。
和田(小川)は手元にある酒の入ったグラスのふちを指でなぞり。
和田「ここにグラスに入った酒がある。これをまだ半分ととるかもう半分しかないととるか…」
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