白河夜船

4/8
前へ
/8ページ
次へ
「異空間?」 あまりにも突然の事でマナはオウム返しに聞き返した。 「えぇ、マナ様は今まで経験したことないでしょう。 私についてきて下さい」 それだけ言うとSZは車内の真ん中をスーっと歩いていった。 「待って!」 マナは急いで立ち上がるとSZの後を追った。 最後尾まで着くとSZは振り返りマナに笑いかけた。 「私はここまでです。ただの案内人ですから。 あとはこの魔法使いと行動を共にして下さい。 彼と一緒に居れば安全ですから」 そこには今まで誰も居なかったはずなのに、フーデッドパーカーを被り、×のついたマスクをした男性が立っていた。 「あれ?アナタ亡くなったんじゃ……」 その魔法使いは昨日マナが読んだ小説の登場人物の1人で異空間で激しい戦闘の末に命を落としたばかりだった。 それにしても、こういう時は主人公がエスコートするのが常ではないか。 そう、お月様のような名前の女の子とか。 「私では不満でしたか?」 「いいえ!とんでもない!」 マナが慌てて首を横に振ると、魔法使いはうんざりした顔で言った。 「そうですよね。 私の私服の肖像画を見ながらイッケメーンって叫んでましたよね。 おかげでこんな事に呼び出されたんです。 本当はしたくなかったのですが」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加