〈 1 〉ホーム 正午前のベンチ

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海水浴場の駅から、私の住むここからひとつ先の駅までが私の町。 結構広いかもしれないけれど、ほとんどは田んぼと畑。この季節は住民の人口より蛙の方が多いと思う。 若い(ほう)の駅員さんが、終電が出ると綺麗に伝言板を消す。黒板消しで消したあと、雑巾までかけてる。 前に、なんでそんなに綺麗にするのかと聞いたことがあった。電車を待つ時間の退屈しのぎに。 「明日、もしかしたら誰かが大切な伝言を書くかもしれないから」 そう言って彼は笑った。 階段を上がって通路を渡って、フラフラしながらホームのベンチへ。 まだ海に入る気にはならないけれど、日除けのないホームは正午前でも暑かった。 誰もいない。 駅舎の中で待てばよかったんだけど、伝言板にはまた下品な落書きがあったから。 海への電車がくる向かいのホームにも、同じように陽が照りつけだしている。 太陽に熱せられるどちらのホームにも、誰の姿もなかった。私だけ。 みんな駅舎で待ってるんだよね。あたりまえ。でももう戻る元気ないし。 10分ほどした時に、向かいのホームに電車が着いた。ほとんど人は乗っていない。 と、その時、停まっている電車越しに、向かいのホームのベンチに人が座っているように見えた。 私と同じように制服姿。 でもうちはセーラー服じゃない。 近くにある中学もセーラー服じゃない。     
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