始まりは鶴の一声なり

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「シンゴ!今年の夏も海に行こうぜ、ナンパしに」 にししと笑うタツヤを横目に俺は『またか』とため息をひとつ 大学に進学して3年目 大学構内の木々達は気がつくと薄ピンクの桜から新緑の葉へと衣替えしていた そういえば、半そでの学生達が増えているような気がする タツヤとは大学のセミナーで知り合った。 茶髪で人懐っこく誰とでも仲良くなれて他人に壁を作らないタイプ。 体型は中肉中背で、ほどよく筋肉がついてる感じだ。 俺はというと・・・・黒髪ストレート・人付き合いは苦手なタイプ。 色白でなかなか太れない事がコンプレックスだったのだが、タツヤ曰く『細身で身長もあるし、イケメンじゃね?』らしい カメラが趣味という共通点もあり、タツヤとはすぐにうちとけた 夏になると一緒に海へ行き、彼女作り目的で女性をナンパしていくという事(主にタツヤがメインになるのだが)俺達2人の毎年の恒例行事となりつつある タツヤの勝敗はなぜかいつも惨敗だ。まぁ、俺としては惨敗の方が助かる 「今年こそはナンパして彼女を作るっ!そして、脱・童てっ」 何を言いたいのか予測がつき、慌てて俺の手でタツヤの口をふさぐ 頼むから大学構内で、その先を叫ばないでくれ。周囲から冷ややかな目で見られるのはごめんだ まったく、俺の気持ちもしらないでよく堂々とこんな事を言おうとしたもんだ むぐむぐと苦しそうにしているタツヤを軽く睨む 俺が何を言いたいのか察したらしく大人しくなった タツヤの口を解放すると、ぷは~と深呼吸をする。 「悪りぃ、シンゴ。つい興奮しちゃって・・・・・・・」 少し苦しかったのか目をうるっさせながら俺をみる うっ・・・・、この表情は反則だ!! 叫ぼうとした事に対して俺が口をふさいだと思ったらしい 半分正解、半分は残念 「ったく、本当しょうがない奴だな、お前は」 思った事をすぐ口に出してしまう けど、素直なところが憎めない 「わかったよ、一緒に行ってやるから。で、いつ行く?」 俺の言葉を聞くなり、ぱぁと顔を明るくするタツヤ 子犬みたいなやつだな、コイツ ん?という事は飼い主は俺になるのか? 冗談じゃない!!飼い主なんて嫌だ!! できるのであれば・・・・・・・・ そんな事を考えながら、俺達2人は午後の講義へと急いだ。 夏はすぐそこまできている。
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