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 小清水に言われてから考えれば考えるほど、僕は自分の気持ちを自覚していった。僕は彼女に恋していた。それは間違いがない。でも、それは一方的なものでしかないだろう。  このままの関係を続けるのが一番だと言う気持ちもあった。僕の気持ちを伝えなければこの心地いい関係は続いていくだろう。でも、気が付いてしまった以上、僕はこの気持ちを抑えておくことはできないという確信もあった。  翌日、電車の窓に僕は自分の気持ちを書き込んでいた。 『あなたの事が好きです。あなたはどうですか?』  電車が並走する。彼女がいつものように窓の文字を読んで大きく目を見開いた。彼女が何も言わないまま電車は再び離れていく。  生きた心地がしないというのはこういう事を言うのかと僕は初めて知った。彼女の驚いた顔。あんな事書かなければ良かったという気持ちと書いて後悔はないという気持ちが混在していてどろどろと僕にまとわりつくような感覚があった。 「今日は随分暗いじゃないか。何か良い事でもあったのか?」  社食で小清水が牛丼を食べながら言う。僕は今日も定食を持ってきていたがあまり食欲がなかった。 「彼女に告った」  小清水が箸を止める。 「……俺も大概変人だが。お前も大概だな」 「何が?」 「いや、なんでも。その思い切りの良さは俺は嫌いじゃないぜ」 「そうか」 「俺の話聞いてないだろ」 「そうだな」 「プリンもらっていいか?」 「駄目だ」  ちっ。と小清水が舌打ちをした。 「嘘だよ。やるよ」 「いいのか!?」  プリンを手で小清水の前に押しやると子供の用に嬉しそうに小清水が喜ぶ。 「いいよ。食欲ないからな」 「このお礼はきちんとするぜ」 「いいよ。別にプリンぐらい」  プリンの蓋を開けて美味しそうに食べる小清水を横目に僕は明日の電車に乗るのが憂鬱だなと考えていた。
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