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 翌日。電車に乗りたくないという久しぶりの感情に襲われた。彼女の返事を聞くのが怖かった。それどころか彼女はもうあの場所にいないという可能性だってあるのだ。電車が地下を出る朝日が窓から差し込んできていた。  電車が並走する。彼女は。いた。でも、俯いていて僕に視線をあわせようとしない。やっぱり嫌われてしまったのだろうかと考えて胸が締め付けられるように苦しくなった。  窓に視線を向ける。何か文字が書かれていた。  『E≠fサ』  いつも綺麗な文字を書く彼女にしては崩れた文字で書かれていた。僕はその意味が分からなかった。そんな僕の気持ちを電車が察してくれるはずもなく無情に僕と彼女の距離を開いていった。  朝から仕事に手が付かなかった。彼女の言葉の意味を考えていてミスが増えた。上司に怒られても上の空だった。昼休み習慣で社食に行くと小清水が先に席についていてカレーうどんを食べていた。 「どうした面白い顔して」  カレーうどんを食べる手を止めることなく聞いてくる。 「浮かない顔って言ってくれ」 「何だよ。せっかくプリンのお礼を持ってきてやったのに」  小清水がスーツのポケットから二つ折にされた紙切れを取り出す。 「何だそれ?」 「お前の想い人の名前と勤めている会社の住所だ」  口をぽかんと開ける。 「そんなのどうやって調べたんだ?」 「色々」  それ以上答えるつもりは無いらしく紙をテーブルの上にのせてカレーうどんを食べる事に戻る。汁を飛ばさないようにゆっくりと慎重に口に運んでいる。紙に手を伸ばそうとして止める。 「なぁ。せっかく調べてくれたのは悪いんだけどな。彼女に嫌われているかもしれない」 「そんなの分からないだろ?」 「昨日の返事が今日書かれていたんだ」 「へぇ。良かったじゃないか」 「でも、僕には意味が理解できなかった」 「何て書いてあったんだ?」  テーブルの上の紙を引き寄せると彼女が書いた文字を書きつける。その文字を見て少し考え込むようにした後、ああ。とうなずいてカレーうどんに戻った。 「分かるのか?」 「むしろ分からないのか?」  小清水がうどんに息を吹きかけながら言う。 「分からん」 「ヒントをやろう。その文字はあまり綺麗には書かれていなかっただろ?」  僕はうなずく。
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