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「こっちにも無いね。」
あの暗がりの中、T君は物怖じする事なく淡々としていました。
結局おみくじの機械は無かったので、おみくじを引く事は諦め引き返す事にしました。
暗がりには、だいぶ目は慣れたものの階段を降りるのは危険が伴うので慎重になる
その為か、みな口数は少なかった。
鳥居まで戻って来ると道路の反対側にある自動販売機でジュースを買い原付に股がり
「疲れた、足だるい、おみくじが無い」
等と雑談をしていた。
すると、思い出したかのようにT君が言いました。
「そう言えばKさあ、さっき階段登ってる時に「こんばんはー」ってあいさつしてたよね?
あれってオレ達をビビらせようとして言ったんでしょう?」
「あ~っ 何て言ってるか聞き取れ無かったけど大きい声出したよね、確か4ヶ所目の急な階段の所で。
俺はTと喋ってるのかと思ったから気にしなかったけど
そういうのだったらいらないでしょ」
「あっいやいや。すれ違ったよね?」
「いや誰ともすれ違ってないでしょ」
「ネタだろ? 本当そう言うのはいいから。」
「いやいや、あの時足元を気にしながら登っていたから顔とかは見てないけど白い服の人とすれ違ったのは間違いないよ。」
「ん~。先頭の俺と後方のYが見えなくて、真ん中にいたKだけに見えたってこと?」
「うっうん。」
「いやっやっぱりそれはない。
あの時さぁみんな左側の手すりにつかまりながら登ってたよね。
それにあそこの階段が1番急だったから本堂にある外灯が遮られて真っ暗だったよね、もうほとんど足元しか見えないぐらい。
それで階段の幅が広いでしょ、まぁ反対側にも手すりあったけど、視界に入るのはギリギリだとしても階段の真ん中ぐらいまで。
って事は、あの暗がりの中、手すり無しであの急な階段を降りてきたって事でしょ?
それは無理でしょう。」
「あーそれは絶対無理だね。それにさぁだいたいこんな時間に神社こないよね。」
「いやでも見たんだって。」
「いやいやネタでしょっ。」
「ネタだね。」
話は平行線をたどると言うより、見ていない二人の意見が強く強引にネタと言う事になっていた。
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