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高さ1.3メートル、僕の身体能力なら楽勝で乗り越えて、タイミングよく飛び込めるはず…
でもその前にもっともっと高いハードルがある。
『死への恐怖心』
毎朝ただひたすら死ねばどんなに楽かを思い浮かべて、飛び込む恐怖心と向かいあう。
地下鉄の転落防止柵に瞳を凝らし、計りながら葛藤する。
それでもいつも勝つのは決まって恐怖心…
負けて続けて苦しみ続ける、
負け続けて地下鉄に乗り続ける、
だからこうしてムダに生き続けている…
死ぬ事ばかり考えているのに、その勇気がないのだから…
…本当の愚か者でしかない。
定刻通りに到着した電車の扉が開いて発車のメロディーがながれ出す。
極力気配を消した僕は、周りに気を配りながらいそいそと列の一番後に続く。
降りてきた白髪を撫で付けた男とすれ違がった瞬間、はっきりと声が聞こえた。
「みんな君と同じだよ…今じゃあの柵が高すぎて俺にはもう飛べ…」
振り向こうとしたら誰かに背中を押されて、誰かと誰かの間に無理やり押し込まれてしまった。
そして誰かによって作りだされたこの世界の下を、誰かが作った地下鉄に乗って強制的にまた始まる1日。
これが僕の日常サイクル。
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