雨の記憶

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「ゼリー買って来た」 枕元に座り、ハルトの好きなぶどう味のゼリーをコンビニの袋から取り出して、顔の上に持ち上げて見せると、ハルトは力なくほほえんだ。 俺はハルトの額に張り付いた細い髪をそっと払って、おでこに手を乗せた。 そんなに高い熱では無さそうなので少し安心する。 「ゼリー、食べたいな」 ハルトの方から言ってくれたことが嬉しくて、俺は思わずにんまりとした。 砂糖に漬かったような優しい声で尋ねる。 「起きられる?」 ハルトは問いに答える代わりに、掛け布団を首まで引っ張って、いたずらっ子のような目をしながら小さな口を開いた。
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