雨の記憶

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俺はゼリーの蓋を開け、プラスチックのスプーンで一口掬った。 「むせないように気をつけろよ」 そう言ってハルトの口に、ぶどう色のゼリーをそっと滑り込ませる。 スプーンがハルトのかさついた唇に触れる。 ゼリーが吸い込まれていった暗い闇を、俺はぼんやりと見つめた。 「おいし」 ハルトがほほえんだ。 おいしいと言った癖に、ハルトはそれ以上ゼリーを強請らなかった。
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