水子

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水子

お茶を一口飲んだきぬえさんは、 世間話でもするような口調でこう切り出した。 『さて、今回の件に関してだけど… まずお母さん、娘さんたちに水子の話はしてる?』 みずこ…………? 当時中学生だった私は『水子』が何か知らなかった。 姉も知らない様子だった。 母はとても驚いた顔をしていた。 『話してなさそうね… じゃあ今説明してしまった方がいいね。 お母さん、この子達が産まれる前に、ひとり子どもをおろしていますね?』 つまり、ひとり赤ちゃんを殺していますね。 『……はい』 今度は私たちが驚く番だった。 母が姉を産んだのは19歳の時。 それよりも先に妊娠して、しかも堕胎していたということになる。 『お姉ちゃんを妊娠するちょっと前に、パパとの子供が出来て、でも生活も苦しくて、パパの子ということすら認めてもらえなくて、おばあちゃんに反対されて産めなかったの………』 このあたりで母はすすり泣きをしはじめた。 『でもその後すぐ妊娠してしまって、堕胎手術の直後にまた繰り返したら、もう妊娠できない身体になるかもしれないって、怖くなって、みんなの反対を押し切って急いで結婚してお姉ちゃんを産んだの』 ちょ、お父さん……………………     
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