13人が本棚に入れています
本棚に追加
水子
お茶を一口飲んだきぬえさんは、
世間話でもするような口調でこう切り出した。
『さて、今回の件に関してだけど…
まずお母さん、娘さんたちに水子の話はしてる?』
みずこ…………?
当時中学生だった私は『水子』が何か知らなかった。
姉も知らない様子だった。
母はとても驚いた顔をしていた。
『話してなさそうね…
じゃあ今説明してしまった方がいいね。
お母さん、この子達が産まれる前に、ひとり子どもをおろしていますね?』
つまり、ひとり赤ちゃんを殺していますね。
『……はい』
今度は私たちが驚く番だった。
母が姉を産んだのは19歳の時。
それよりも先に妊娠して、しかも堕胎していたということになる。
『お姉ちゃんを妊娠するちょっと前に、パパとの子供が出来て、でも生活も苦しくて、パパの子ということすら認めてもらえなくて、おばあちゃんに反対されて産めなかったの………』
このあたりで母はすすり泣きをしはじめた。
『でもその後すぐ妊娠してしまって、堕胎手術の直後にまた繰り返したら、もう妊娠できない身体になるかもしれないって、怖くなって、みんなの反対を押し切って急いで結婚してお姉ちゃんを産んだの』
ちょ、お父さん……………………
最初のコメントを投稿しよう!