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これは、ちゃんと
「わ、やあちゃん可愛い!バッサリ切ったねぇ」
「あ、おはよう。めっちゃ切った」
はは、違和感の残る頬をなだめて軽く笑う。
そう。
私は髪を切った。
それもバッサリ。
背中まで頑張って伸ばした、手入れも頑張っていた、自慢の髪の毛だった。
スルリ。
肩口あたりにある髪を軽くなでて、あまりの短さに、少し手が空振る。
冷えた朝に首筋がスウスウと寒さを訴える。
「似合ってる、かわいい!」
キラキラと目を輝かせて、私の隣の空席にガタンと遠慮なく座る。
そこは彼女の席ではなく、よく遅刻する高野くんの席だ。
ざわざわとした教室で、他クラスの彼女は特別目立たない。
それを良いことに、こうして登校後すぐ彼女、日野田亜美は私の元へやってくる。
「そうかな。ありがとう」
親友の亜美に褒められるのは嬉しい。
満更でもないし、かわいい亜美に言われると優越感がある。
いつもならば。
けれど、今はそんな亜美の言葉が苦しくて、ぐぅ、と心が呻いた。
声が震えないように、短く返答するので精一杯だ。
そんな私の違和感に気付いたのか、亜美は少し眉を下げてやあちゃん?と声を潜めた。
だめだ。
亜美に心配をかけるなんて、私は馬鹿か。
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