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「暑いわ」
と、マナが言った。
僕は、聞こえてなかったように、そのまま本を読み続ける。
マナは、窓の方に向かうと窓の外を眺めた。
窓の外は、雨が降っていて、身の丈程の草原が遠くまで、続けてる。
時々、強い風が吹くらしく、このコテージに来るために乗って来た船の上で見た波の様に、草が左右に揺れる。
「暑いわ」
と、また、マナが言った。
「窓を開ければ、いい」
僕は、本から一瞬目を離すと、マナに言った。
部屋には、クーラーがなく、首振りの扇風機があるだけだ。
マナは、窓を開けた。
生温い風と共に、雨が吹き込んだ。
「気持ちいい」
マナは、窓から身を投げ出す様に、雨に打たれた。
目を閉じ、笑みを浮かべて雨に濡れる彼女を、僕は色っぽいと思った。
開けた窓から、うっすらと風に運ばれて、潮の匂いがした。
「雨が止んだら、ちょっと外を歩いてみようか」
僕は、言った。
海まで、歩いてみたいと、ふと思った。
草原の果てには、岬があり、灯台もある。
雨の止むのを待った。
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