序 この世界の外側に

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序 この世界の外側に

 この世界に住んでいる自分以外の人間は、実は人間ではなく、意識を持たないロボットかなにかなのではないか。  そんな想像をしたことはない?  あるいは、自分の生きている世界はすべて、予め用意された舞台の上で、自分以外の人間はみな、台本の通りに振舞って自分の人生を演出している――  例えばわたしが君に、「君は実は人間ではなくて、僕の人生を演出するために用意されたロボットかなにかなんだろう?」と訊いたとしても、まさかそんなはずはない、と答えるだろう。  だけど、それもきっとプログラムの内だ。  「全員が同じ意識をもった人間である」という前提のもとに、自分の人生と、人生を彩る登場人物たちは用意されたのだから。  そして――そのことを確かめる方法は、ない。  もし、目の前にいる君が、実は人間そっくりに作られたロボットか、または「外の世界」が用意した俳優なのだとしても―― 「そんなこと、あるわけない」  そういう君が、わたしと同じ人間だって、どうして言い切れる? 「だって、僕には意識がある。君と同じように」  君の意識が、わたしのものと同じだなんて、わからない。 「それはそうだけど……でも、だったらどうだって言うの? 君の人生にとって、なにか不都合がある?」  ――わかった。  確かに、この世界がすべて作り物で、わたし以外の人間はみな意識を持たないロボットで、わたしの人生を彩る登場人物として台本に従って行動していて――わたしの目につかないところでは、実はスイッチを切られて活動を停止している。  もしそうだったとしても、わたしの人生にはなにも変化はない。それはきっと、その通り。  だけど。  わたし以外の人間すべてが、ではなくて、例えば世界の半分くらいがそうだとしたら?  半分でなくても、全人類の1%くらいが、実はこの世界を演出するための「エキストラ」で、世界の外では演出家がメガホンを持って、彼らを操っているとしたら?  ――もし、そうだとしたら、「なにか不都合があるか?」なんてこと、言える?  そして――  君がその「1%」ではない、ということを、どうやって証明できるというのだろう。  さあ――  君の意思を、見せて。  そうすれば――
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