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テレビから漏れてくる笑い声の中、
君は隣で、黙って乱れた前髪を直してる。
両手で器用に髪を流す君は、
相変わらず耳まで真っ赤で。
悔しそうに下唇を噛みながら、
画面じゃない違うどこかを見つめてる。
君は、本当に困った人だ。
おでこにキスしただけで、
そんな表情をしてくれるのか。
(唇にしたら、
一体どんな顔を見せてくれるんだろう……)
左腕が君の体温で熱くなる。
その熱が伝染するみたいに、
どんどん熱くなる
自分のカラダを止められない。
君と同じか。
こんな風になるのは、きっと今だけ。
穢れを知らない、
純粋で素直な君に引っ張られているだけ。
――――それでも、これは僕のはじめて。
もはや雑音となった笑い声の中で、
まだ知らない君を
頭の中で想像してたことは誰にもナイショ。
Fin
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