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「どれどれっ、あ!ほんとだ!
最近僕一押しの芸人さんっ!」
何にも考えていないふりして、
平然と君の隣に座る。
ほんの少し、肩が触れた。
「っ///」
その瞬間、
君がわずかに僕と距離をとったこと、
僕は見逃さなかった。
大勢でいるときとは確実に違う、君の反応。
愛らしくて、そして、もどかしい。
――――わからせてやりたい。
「ねぇ、それワザと?」
左手で君の右手を押さえつけ、半ば強引に
横から覗き込む。
君との距離は、あと数センチ。
「は、、えっ?な、、なにが?」
いかにも動揺してますって顔してる。
(この部屋で初めて目が合ったな……)
沈黙を避けて、勝手にテレビをつけて、
一人で話し始めて。
ずっと背中しか見えてなかったけど、
僕は気づいてた。
ソファー越しから見え隠れする、
君の耳が真っ赤になっていたこと。
「……お願いだから、
そんなに僕を煽んないでよ」
ちゃんと顔みてわかったこと、
赤いのは耳だけじゃない。全部だ。
「ちょ、まって、まって!」
ぎゅぎゅぎゅ
左手で顔を押さえつけられた。
「わっ、私は純粋にお笑いがみたい!ね!
ほら、今回めちゃめちゃ面白い回だよ!!」
君は困った人だ。
何にも分かっていないみたい。
僕が必死に〝甘い雰囲気〟を
つくろうとしてること――――――――。
もしかして気づいてて壊してる?
……いや、違う。
経験がないから、
説明しないとわからないのか。
「そっか、まずは環境づくりからだよね。」
ソファーから立ちあがって、
テレビの電源を消す。
「え!なんで!今みてた……」
「ねぇ、キスしようか」
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