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「・・・司のひいおじいちゃんが居てくれたら、何とかしてくれたかもしれないのにね」
「わかんねぇよ、そんなの」
千加は、やや微笑むと立ち上がり、ゴンッと鈍い音を立てた。
「いったぁ・・・」
半泣きの声に司は飛び起きると、後頭部を押さえて悶絶する千加の横にしゃがんだ。
「何回ぶつければ気が済むんだよ、ほんとドジだな」
「ヒトが痛がってんのに、その言い草はなによぉっ・・・」
涙ぐんだ恨めしい眼差しが見上げて来る。
頬だって桃色になってて―――。
司は、女の子を感じさせる千加の表情に見入っていた。
刹那、ふたりは見つめ合うカタチになる。
その幸福な数秒は、千加が首を正面に戻した事により終わりを告げた。
声になる様な、ならないような声を発しながら、千加は後頭部を摩り続けた。
息を呑み込み司は手を伸ばすが、触れるはずだった黒髪は自発的に上へと擦り抜けた。
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