第2章 8月13日ー邂逅1ー

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流石に今は視えても、安易について行ったりはしない。 代わりに、学校に行けなくなった。 形ばかりの言い伝えだけが残って、田んぼだらけだった場所も住宅だらけになっている。 しかし、地方の例に漏れず、高度経済成長時に建てられたデパートは、 ここ10年程ですべて閉店。居抜きで入った企業も、1年持てばいい方で、すぐに空き物件となってしまう。 そのままの状態が続き、最終的には更地で駐車場、というのがお決まりになってしまっている。 言わずもがな学校も古い建物が多く、歴代の生徒の思念やら、ただ単に通行する幽霊、人間じゃない生き物が常時徘徊しているのだ。 なるべく意識を向けない様にしているけれども、『視える』というだけで、ただの男子高校生。防御する方法なんて知らない。 相手は『視える』と分かれば、圧し掛かって来る。 昨日の補習みたいに倒れる事が日常茶飯事になった。 身体だけじゃなくて、精神も蝕まれて『死』やら『絶望』が脳内を這いずり回る。 お祓いに行くという選択肢もあるが、司の場合はその選択肢は無い。 ただ、医者になる事を強要する両親にとっては、成績さえ落とさなければいいというスタンスだった為、ある意味救いだったかもしれない。
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